【原理別比較 2】 動的光散乱法(DLS)
動的光散乱法の測定原理とは
動的光散乱法(DLS)は、液体中でランダムに動く微小粒子からの散乱光の強度変動(揺らぎ)を分析し、粒子径を求める測定原理です。
液体中に分散された粒子は、ブラウン運動によりさまざまな方向に拡散します。この粒子にレーザを当て、散乱される光の変動を解析し、粒子径の分布を求めるのです。
小さい粒子は速い間隔で揺らぎ、大きな粒子は遅い間隔で揺らぐ性質を用い、以下のような手順で測定・解析が行われます。
- レーザを試料に照射する
- 散乱光の強度変動を検出器を用いてフォトンカウントで取得する
- 強度変動データから自己相関関数を算出する
- 算出された自己相関関数から、粒子径分布を推定する
測定された「揺らぎ」は「自己相関関数」に変換されますが、この時に用いられる手法は2種類あります。
一つは「アインシュタイン・ストークス理論」に基づき、拡張係数を得るために「揺らぎ」を自己相関関数に変換する方法「光子相関法(PCS)」です。PCSでは、揺らぎと自己相関関数から求められた拡張係数から平均粒子径及び分布幅の大まかな指標である多分散指数を計算し、さらに演算により粒子径分布を求めます。
もう一つの方法は「周波数解析法(高速フーリエ変換:FFT)」です。FFTでは、散乱光強度の信号に含まれている周波数成分をフーリエ変換することにより、周波数の強度分布を算出します。そしてこの周波数の強度分布から、独自のアルゴリズムにより粒子径分布を求めます。
測定範囲
動的光散乱法はサブミクロン、特にナノスケールの粒子径を測定するのに適した方法です。具体的には、数nm(ナノメートル)~ 数百nm(ナノメートル)までの範囲をカバーします。
特に100nm以下の微細な粒子は、レーザ回折・散乱法よりも動的光散乱式のほうが高精度で測定できます。一方、1μm以上のサイズの粒子径分布測定に適しているのは、レーザ回折・散乱法です。
各原理の概ね解析可能な粒子径範囲は以下のとおりです。
- レーザ回折・散乱法(LD):数十nm(ナノメートル)~ 数mm(ミリメートル)
- 動的光散乱法(DLS):数nm(ナノメートル)~ 数百nm(ナノメートル)
- 動的画像解析法(DIA):数百nm(ナノメートル)~ 数十mm(ミリメートル)
粒子径分布測定に用いられるそれぞれの原理で比較すると、動的光散乱法はごく小さな粒子の径分布測定に適していることが分かります。
測定できるサンプル
動的光散乱法は、主に粒子径がナノメートルからマイクロメートルの範囲の微粒子の分析に適した方法です。バイオサイエンスや医薬品など、さまざまな分野の研究および品質管理に活用されています。
代表的なサンプルはタンパク質や抗体、リボソームなどの生体サンプルをはじめ、食品や飲料、インク、接着剤、エマルション、コロイド、ポリマー、金ナノ粒子などです。
ナノテクノロジーおよびナノバイオテクノロジーの発展に伴い、このようなサンプルの分析はますます需要が高まっています。
メリット・デメリット
動的光散乱法はサンプリング操作が容易であることや、サンプルの濃度を問わず測定できること、非侵襲的に測定できる点がメリットです。
一方、原理上一度に粒子集団全体を分析するため、粒度分布の幅が広いサンプルでは精度が落ちる可能性がある、粒子の沈降や凝集が起きるとブラウン運動が妨げられ、測定結果に影響を与えるなどのデメリットがあります。
製品選びのポイント
それぞれ特徴のある製品が各メーカーより販売されています。価格はもちろんのこと、精度や使い勝手、業務の進めやすさなども視野に入れた機器選びがポイントとなるでしょう。
動的光散乱法を採用した機器を選ぶにあたって、チェックしておきたいポイントは以下のとおりです。
- 測定理論…周波数解析法か光子相関法か/ホモダイン方式かヘテロダイン式か
- メンテナンスの効率性
- 長寿命・耐久性…半導体レーザは長寿命・耐久性高い、ガスレーザは寿命が短い
- 操作性…直感的な操作が可能か
- 解析の応用性
- スラリー分散性…流動電位法の優位性
- 高濃度での測定…(必要があれば)短いレーザ焦点距離
- 極微量試料の測定…キュベットセルがあるか
- 依頼測定、デモ測定…可能か(アプリケーションラボの充実)
これらの中からピックアップしてご紹介します。
測定理論
DLSにおいて、粒子径やその分布を求める方法は2つあります。
一つは、光子相関法(PCS)をもとにしたホモダイン方式での測定です。この方法は粒子径を測定し、さらに分布関数を用いて演算することで粒子径分布を求めます。もう一つは、周波数解析(FPS)をもとにして粒子径分布を測定するヘテロダイン方式です。
また、この2つの方法は散乱光検出においても異なる特徴があります。ホモダイン方式は粒子からの散乱光のみを検出しますが、ヘテロダイン方式はそれに加え入射光の一部を参照光として検出できるほか、超微粒子からの微弱な散乱光信号も参照光と合わせて検出可能です。
一般的にはホモダイン方式を採用した機器が多いものの、演算ではなく実際の粒子径分布を測定でき、微弱な信号も検出しやすいヘテロダイン方式を採用した機器のほうが、高精度であるといえます。
メンテナンスの効率性
動的光散乱法の原理を用いた機器ではガスレーザもしくは半導体レーザが採用されています。
ガスレーザは定期的なメンテナンスや部品交換が必要で、都度装置の停止およびコストが必要となります。一方、半導体レーザはほとんどメンテナンスを必要としません。効率的な業務とランニングコスト低減には、半導体レーザを採用した機器の選択がおすすめです。
操作性
機器接続が容易である、装置のアイコンデザインが分かりやすいといった、機器の扱いやすさも重要なポイントです。
操作性の良い装置は、測定効率や精度の向上に好影響をもたらすでしょう。
解析の応用性
動的光散乱法を用いた粒子径分布測定器では、同時にゼータ電位測定がおこなえるものや、そのオプションが選択できるものもあります。ゼータ電位は、粒子の分散安定性を評価する上で有効なパラメータであるため、必要性に応じてこの機能を備えたものを選ぶこともポイントの一つです。
また、分子量やマイクロレオロジー、網目状解析などの拡張解析ができる製品もあります。

















