正極材
正極材における粒子径の役割と重要性
電池は、正極材と負極材と電解液が化学反応を起こすことによって電気を生み出すものです。この正極材における粒子径の役割と重要性について紹介します。
粒子径が正極反応に与える影響とは?
正極反応とは、電池や燃料電池などの化学電池において、正極(プラス極)で起こる化学反応です。正極では主に還元反応が進行します。粒子径はリチウムイオン電池の正極反応にさまざまな影響を与え、電池の容量や出力特性などを左右します。
粒子径と充電速度・エネルギー密度の関係
粒子径は充電速度とエネルギー密度において逆相関の影響を与えます。小粒子の場合は急速充電が可能となるものの、エネルギー密度を低下させます。逆に大粒子の場合は高エネルギー密度を実現するものの、充電速度が犠牲になります。実用性を考えた場合には、材料と用途について考慮した上で粒径の最適化を行うことが必要となってくるため、レーザー粒度分析装置などを用いて制御が行われています。
粒子径のばらつきと劣化・寿命への影響
正極材の粒子のばらつきは、電池の性能にさまざまな影響を与える可能性があります。例えば、充放電特性の低下やエネルギー密度の減少、サイクル寿命の短縮といった影響が考えられます。
正極材の粒子測定事例紹介
ここでは、正極材の粒子測定事例について紹介していきます。
レーザー回折法による正極活物質の粒径評価
正極活物質の粒径は、リチウムイオン電池や全固体電池の作製を行う上で重要な管理項目です。株式会社アイテスでは、レーザー回折法による正極活物質の粒径評価を行った事例を紹介しています。
ここで紹介されているのは、ニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC酸化物)の粒径測定を行った事例です。測定を行うにあたって試料は市販の試薬を使用し、乾式での測定が行われています。その結果粒子径や数十μm以下の単分散状態となっており、メジアン径(積算分布50%となる粒径)は12μmと算出されています。
参照元:株式会社アイテス
(https://www.ites.co.jp/chemistry/index/component_analysis/evaluation_particle_size.html)
画像解析による正極活物質粒径や分散状態の評価
日産アークのサイトでは、画像解析を用いた正極活物質粒径や分散状態の評価について紹介されています。
例えば顕微鏡法を用いた場合、実際に観察を行い対象物の状態を視覚的に捉えることが可能です。しかし、画像からの印象だけでは試料間の比較が難しい場合もあるため、画像解析によって情報を数値化すると比較しやすくなります。
画像解析を行うと正極材についてどのようなことがわかるのか、という点ですが、例えば活物質の粒径や分散状態、断面における活物質の面積率について把握が可能です。このような活物質の分散状態や形状はリチウムイオンや電子のパスに影響するため、電池性能を理解する上で上記のような情報を知っておくことが大切であるといえます。
参照元:株式会社日産アーク
(https://www.nissan-arc.co.jp/services/lib027/)
原液状態で触媒インクの粒子径分布測定
電極触媒インクの粒子径は、触媒の表面積・空孔率に関わっており、例えば触媒の効率や剥離性、ガスの拡散性に対して影響を与えています。この点から、目的に合わせて触媒インクの粒子径分布について設計・製造を行うことが非常に重要であるといえます。
ただし、触媒インクは実際にはスラリー状態となっています。粒子径分布の測定を行うには、分散媒による希釈を行い実際とは異なる濃度での分析を行わざるをえないといったように、実際の状態で粒子分布を取得することは困難な状況でした。そこで、株式会社堀場製作所では電極への塗布を行う前にレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置 LA-960シリーズ「Partica LA-960V2」の高濃度セルユニットを用いることによって、原液状態で触媒インクの粒子径分布測定を行っています。
参照元:株式会社堀場製作所
(https://www.horiba.com/jpn/scientific/applications/energy/ads-1074/)
正極材の粒子径測定に使われる技術
正極材の粒子径測定を行う際に用いられる技術には「レーザー回折散乱法」、「走査型電子顕微鏡」、「動的光散乱法」などがあります。
レーザー回折法・SEM・DLSなどの特徴比較
「レーザー回折散乱法」は、粒子径分布の測定を行う際によく用いられている方法です。粒子に対しレーザー光を照射し、散乱口の強度分布から粒子径の算出を行います。乾式・湿式いずれの場合でも測定を行うことができ、大量のサンプルを短時間で分析可能です。測定範囲は通常0.1μm〜数mmとされています。
「走査型電子顕微鏡」は、試料表面に対して電子ビームを走査して発生する二次電子などを検出し、表面の形状を観察します。高い倍率で粒子形状や表面の状態を直接観察可能ですが、粒子が凝集している場合には正確な測定が難しくなるために、分散処理が大切です。
「動的光散乱法」は、ブラウン運動する粒子からの散乱光強度の揺らぎを解析して粒子径の測定を行う方法です。測定範囲は通常1nm〜数μmとなっており、中でも100nm以下の微粒子に対する測定を行う場合に高い精度を発揮するという特徴がある方法です。
材料特性に応じた測定手法の選び方
正極材の粒子径測定では、材料の粒径範囲、組成、測定目的に応じた適切な手法選択が大切です。汎用的なレーザー回折法を基本としつつ、ナノサイズ材料には動的光散乱法を用いるといったように、材料に応じた測定手法を選択することによって正確で信頼性の高い粒子径評価が実現できます。
測定精度に影響する前処理と試料条件
粒子径測定の精度は、試料前処理や分散状態、測定条件によって大きく左右されます。
粒子は凝集した状態で存在しているケースが多く、安定した測定を行うには一般的には試料を希釈し、分散処理を行います。これは、一次粒子の状態にする処理です。希釈して粒子間の距離を広げ、分散剤の添加や超音波によって凝集を解いておくと、凝集の影響を小さくした状態で測定を行えます。また、できる限り使用状況に近い状態で測定する方法もあります。製品として使用される場合、その状況に応じて安定となるように設計されています。この点から、濃度や温度など実際の使用条件のもとで測定した場合には、より安定した測定が可能となります。
まとめ
こちらの記事では、正極材における粒子径の役割と重要性、粒子測定事例、粒子径測定に使用される技術について紹介してきました。正極材は電池の性能を大きく左右するものです。この正極材においても粒子径は大きな影響を与えるものであるため、適切な粒子径制御を行うことが必要であるといえます。

















