粒子表面積測定
粒子表面積測定とは?
粉体の特性の中には、含まれている粒子の表面の状態に関連しているものが数多くあります。例えば粒子の大きさや分布などの情報のほかにも、比表面積(=単位質量あたりの表面積)などが挙げられます。この比表面測定値は、粉体原料や最終的な製品の特性や品質を表す、重要なデータとなります。
この比表面積を測定するには、下記でご紹介するガス吸着法などの方法が用いられています。
粒子表面積測定の主な方法
ガス吸着法について
ガス吸着法とは、比表面積を測定するために使用されている方法です。この方法は、ほとんどの物質の場合、非常に低い温度にさらされると、周辺に存在するガスの分子を引きつける性質(=物理吸着)を利用したものです。ある条件下で、粒子を低温状態にしたときに、粒子の表面に物理吸着したガス量を測定し、比表面積を計算します。このとき使用される計算式を導き出した3人の頭文字をとり、「BET法」と呼ばれています。
また、このガス吸着方法には、「流動法」と「容量法」の2種類があります。簡単にいうと、「流動法」はガスの濃度の変化を検出するものであり、「容量法」は圧力変化の検出により測定を行います。この2つのうち流動法は、細孔分布の測定は行えないものの、比表面積測定に特化した方法となっており、さまざまな研究などで採用されています。
その他の測定技術
上記でご紹介しているガス吸着法の他に、比表面積を測定する方法として「透過法」と呼ばれる方法があります。
粉体を充填した層に水や空気などの流体を流そうとした場合、粉体粒子が細かければ細かいほど流れにくくなります。このように、流体の透過率と粉体の粒径には相関がありますが、この関係を利用して粉体の比表面積を求める方法を透過法と呼びます。実際に測定を行う場合、透過させる流体には空気を用いる方法が主流であり、適当な試料筒に充填した粉体層に流体を通し、その時の圧力効果と流速を測定して試料の比表面積を求めます。
その他に、粒子を液体と接触させた際に発生する熱量から比表面積を測定する「浸漬熱法」などもあります。
測定に使用される装置と技術
使用される測定装置の説明
比表面積を測定する装置は、さまざまな製品が各社から販売されています。
例えば、マイクロトラック社から提供されている高精度ガス吸着量測定装置「BELSORP MINI X」は、比表面積のほか、細孔分布や細孔容量についても短時間・高精度で評価が可能。4本の測定ポートと飽和蒸気圧専用のポートに、専用の圧力センサを搭載していることから独立した形での同時測定を行えます。
最新技術の紹介
上記でご紹介した、マイクロトラック社の「BELSORP MINI X」では、BELSORP次世代ソフトウェア「BELControl」を使用できます。こちらのソフトウェアを使用することにより、直感的な使用が可能となっています。さらに測定実行や測定前の準備などいくつかの手順をステップごとにガイドするため、もし経験が浅い人が測定を行う場合でも、簡単に利用することができます。
また測定者の経験に合わせた設定ができ、経験が浅い人の場合は試料情報や前処理条件選択、測定範囲の設定など簡単な操作により測定が可能。経験値が高いユーザの場合は、前処理設定やガス導入量の設定など、ユーザーによる独自の詳細設定が可能となっており、測定ニーズに合わせたカスタマイズ評価を行えます。
さまざまな素材における粒子表面積測定の応用
粉体における評価例
粉体の比表面積を測定する方法としては吸着法や透過法などさまざまなものが用いられていますが、その中でも吸着法は純粋に比表面積を測定する方法として特に優れているとされています。例えば医薬品の場合、比表面積は生成や混合、成形、包装といった各プロセスに影響するとともに、製品寿命や溶解性などにも大きく影響します。
繊維における評価例
比表面積測定を用いて、植物繊維をナノサイズまで細かくほぐすことで得られる「ナノセルロース」の評価が行われることがあります。木質繊維やパルプからナノセルロースを製造する過程では、太い繊維が次第に微細な繊維に変化していきます。この変化を評価する方法のひとつが、比表面積評価となっています。
比表面積測定を行うにあたっては、サンプルの乾燥処理が非常に重要です。適切に乾燥処理したナノセルロースの表面積測定には、一般的にBET法が用いられています。ただし、乾燥したナノセルロースは空気中の水分も吸収しやすいため、比表面積サンプル管に充填した後、前処理装置などで再度乾燥させる必要があります。
膜における評価例
表面物性測定を行う上では、試料の表面などに応じて測定手法を選択します。比表面積測定においても、例えば基盤上の薄膜を測定対象とする場合、窒素ガスではなくクリプトンガスを用いて測定を行う事例があります。
比表面積測定を行うとき、表面積が非常に小さい材料では窒素ガスを用いた測定が困難になることから、クリプトンガスを用いた測定が行われます。
基板や成形体における評価例
さまざまな用途に用いられている活性炭ですが、一般的に流通している活性炭は粉状や粒状が主流となっており、周囲を汚しやすい問題があります。そこで指定形状に成形された活性炭のニーズが高まっています。
活性炭は内部に持つ細孔により比表面積が増加するため、比表面積が大きいほど吸着できる物質の量が多くなる性質を持つため、活性炭成形体の開発が行われる中では比表面積の評価も行われています。
まとめ
こちらの記事では、粉体の特性に大きく関わる比表面積について紹介してきました。比表面積測定にはどのような方法があるのか、またどのようなところで使用されているのかといった点をまとめていますので、ぜひ参考にしてください。