ナノ粒子合成技術と粒子径測定の重要性
ナノ粒子とは
ナノ粒子とは、1つの物理的寸法が100ナノメートル未満の材料のこと。組成はバルク材料と同じながら、そのサイズ効果により特有の電気的・熱的・磁気的・光学的な特性を有する点が特徴です。 その特性を応用し、医薬品や化粧品、電池、触媒などの多方面でナノ粒子が用いられています。
ナノ粒子の合成技術
トップダウン法とは
トップダウン法とは、物理的な方法により材料を微細化してナノ粒子を合成する技術の総称です。 具体的な合成方法として、ガス凝縮やリソグラフィー、エレクトロスプレー、熱分解などの方法がありますが、代表的な方法はボールミル法(ボールミリング法)。ボールミル法とは、容器内に材料とボールを投入し、回転による摩擦等でナノ粒子を合成する技術です。 トップダウン法は多くの材料を一括でナノ粒子に合成できることから、大量生産に向いている手法です。大量生産によるコスト削減の実現も、トップダウン法の特徴と言って良いでしょう。 一方、ナノ粒子のサイズや形状の制御が難しい点はトップダウン法の課題。ナノ粒子の用途に応じ、合成プロセスにおける調整が必要となります。
ボトムアップ法とは
ボトムアップ法とは、化学的な方法により原子・分子レベルの材料を集積してナノ粒子を合成する技術の総称です。 具体的な合成方法の1つがゾルーゲル法。溶液中で先駆体を加水分解してナノ粒子を合成する技術です。ほかにも、気相における化学反応を利用してナノ粒子を合成する化学蒸着法、溶液中で還元剤を利用して金属ナノ粒子を合成する液相還元法、高温・高圧の環境下における溶液反応によりナノ粒子を合成する水熱合成法など、用途・目的・材料特性に応じて様々な手法が用いられます。 トップダウン法とは異なり、ボトムアップ法ではナノ粒子のサイズや形状の精密な制御が可能となります。
粒子径測定の重要性
製品性能と品質への影響
粒子径測定によりナノ粒子の大きさが均一化されれば、材料の特性も均一化されます。 これにより材料の反応速度や物性が安定化。ひいては、最終的な目的物の性能の安定化に貢献します。 なお、医薬品や化粧品では、粒子サイズが小さければ小さいほど吸収効率が向上します。サイズの均一化とあわせ、体内や肌への浸透性が向上するため、期待される効果の向上にもつながるでしょう。
反応速度への影響
ナノ粒子は、従来の微粒子と比較して表面積比率が大きいため、反応面積の比率も大きくなり触媒活性が向上します。粒子が小さいほど接触面積比率が高まり、効率的な化学反応を得られる、という理屈です。 粒子径を適切に管理することでその均一性を維持できれば、反応環境が均一化。反応効率が高まり、かつ反応速度等にバラつきが生じにくくなることから、最終製品の品質の安定化につながります。ひいては生産性の向上にも貢献するでしょう。
その他の特性への影響
粒子径は、そのサイズにより光学的・電気的・磁気的な特性が変化します。この特性の変化を利用し、様々な製品に応用されています。 応用の具体的な例の1つがバイオマーカー(疾患の有無、病状の変化、治療効果等を評価する各種指標)。粒子径の大小により色が変化する金ナノ粒子を利用した製品です。 金ナノ粒子には、プラズモン共鳴による光の散乱により、粒子径が小さいほど赤色に近づき、粒子径が大きいほど青色に近づくという特性があります。この特性を利用し、各種のバイオマーカーが開発されています。
ナノ粒子径測定の必要性
主なナノ粒子径測定法
ナノ粒子径測定法には、主に動的光散乱法、電子顕微鏡観察、X線回折法の3種類があります。 動的光散乱法とは、粒子のブラウン運動を観察してサイズを測定する手法。溶液中の粒子径測定に利用されます。 電子顕微鏡観察とは、高解像度の電子顕微鏡により直接粒子を観察する手法。サイズ測定において、特に高度な精密さが求められる際に利用されます。 X線回折法とは、結晶構造により粒子径を測定する手法。結晶性のナノ粒子のサイズ測定に有効な方法です。
精密な粒子径測定は、最終製品の品質安定化のために大変重要なプロセスとなります。
まとめ
ナノ粒子の合成技術には、トップダウン法とボトムアップ法の2種類があります。それぞれメリットの異なる技術ですが、粒子径の安定化を図る上ではボトムアップ法が重要です。 ボトムアップ法により粒子径が安定化すれば、結果として最終製品の品質も安定化します。特に医薬品や化粧品、バイオマーカーなどの分野では、ボトムアップ法によるナノ粒子径の安定化が製品品質の鍵を握ると言っても過言ではありません。
自社に合う粒子径分布測定装置は「目的(粒子径分布測定なのか、形状分析なのかなど)」と
「測定したい粒子の大きさ」から合う原理がわかります。
最大4つの質問に答えることで自社に合う粒子径分布測定装置がわかる検索を用意しました。