リチウムイオン
リチウムイオン電池における粒子径の重要性とは?
ここでは、粒子径はリチウムイオン電池においてどのような重要性を持っているのか見ていきましょう。
粒子径が電池性能に与える影響
粒子径によって、リチウムイオン電池の性能は大きな影響を受けます。例えば粒子径が小さい場合には表面積が増加することによって、リチウムイオンの挿入や脱離の反応面積が拡大します。この点から、高い充放電容量が得られる反面、不可逆容量も増加する点が特徴として挙げられます。
また、粒子径が大きい場合には初期不可逆容量は減少し、可逆容量は20μm付近でピークになります。大きな粒子径の場合には電極密度が向上する点がポイントであり、エネルギー密度の向上につながります。
さらに粒子径は充放電特性にも影響を与えます。粒子径が小さい場合にはリチウムイオンの拡散距離が短くなるために高レート充放電性能の向上につながります。ただし粒子径が小さい場合には電極の劣化ポイントを増加させてしいます。
このような点から、電池の用途や求められる性能によって最適な粒子径は異なってきます。容量や寿命、充放電特性のバランスを考えながら決定することが大切です。
正極・負極材で求められる粒子径の違い
正極材としては、リチウム含有遷移金属酸化物が一般的に用いられています。正極材はおよそ10μmの粒状のものが多くなっており、結着剤と炭素系導電助剤と共に、10〜20μmの厚さを持つ集電極のアルミ箔上に塗工されて正極として使用されています。
また、負極材も数〜10μmの粒径を持つ粉末で、結着材と炭素系導電助剤と共に集電極の銅箔に塗工され、負極として使用されています。
リチウムイオン電池の粒子測定事例紹介
続いて、リチウム電池の粒子測定に関する事例を紹介します。
黒鉛の粒子径と形状によるエネルギー密度への影響
Bettersize社では、リチウムイオン電池の負極材料である黒鉛の粒子径と形状が、エネルギー密度にどのように影響を与えるかを分析しています。こちらの研究では、3種類の黒鉛試料(A、B、C)の測定において、粒子径分布と円形度を同時測定ができる「Bettersizer S3 Plus」が使用されています。
実験ではBettersizer S3 Plusを使用し、試料の粒径と粒度分布をレーザー回折法で測定しています。その結果、試料A、B、Cの中央値径はそれぞれ6.8μm、16.0μm、23.7μmと段階的に増加し、粒子径20μm付近で可逆容量が最も大きくなると確認されています。また形状による影響については円形度が高いほどタップ密度が向上しており、試料Bが最も高い1.01g/mLを記録しています。
粒子径と形状はLIBにおける負極のエネルギー貯蔵容量を決定する主要なパラメーターであり、製造プロセス効率向上のためには、最適な範囲内で監視する必要があります。従来、黒鉛の円形度と粒子径の測定には少なくとも2台の装置が必要でしたが、今回使用されているBettersizer S3 Plusはレーザー回折法とダイナミックイメージ技術を1台の装置に搭載していることから、粒子径と形状の同時測定が1台で可能となっています。
参照元:Bettersize
(https://www.bettersizeinstruments.com/jp/learn/knowledge-center/investigating-the-particle-size-and-shape-influences-on-anode-energy-density-of-lithium-ion-batteries/)
レーザー回折による正極活物質の粒径評価
株式会社アイテスでは、リチウムイオン電池や全個体電池の製造において重要な管理項目となっている正極活物質の粒径測定に関し、レーザー回折法を用いた評価事例を紹介しています。
市販のニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC酸化物)のリチウム塩を乾式で測定を行った結果、粒子径は数十μm以下の単分散状態で、メジアン径(=積算分布50%となる粒径)が12μmと算出されています。また、SEM観察においても概ね10μm程度の粒子で構成されているように、レーザー回折における結果測定と矛盾しない結果となっています。
ここでは、乾式による測定を行った結果が紹介されていますが、水などの溶媒に分散させた形でも粒度測定が行えます。
参照元:株式会社アイテス
(https://www.ites.co.jp/chemistry/index/component_analysis/evaluation_particle_size.html)
レーザ回折式粒子径分布測定装置およびダイナミック粒子画像解析システムによる負極材料の評価事例
株式会社島津製作所では、リチウムイオン電池の負極材料として用いられている天然球体黒鉛の粉体物性評価を行っています。5種類の試料(A-1、A-2、B-1、B-2、C-1)の評価を行うにあたっては、粒子径分布測定には「レーザー回折式粒子径分布測定装置SALD-2300」、粒子形状評価には「ダイナミック粒子画像解析システムiSpect DIA-10」を使用しています。
試料は用途別に特性が異なっており、A-1(10-11μm)は出力重視という特徴を持っておりHV向け、B-1(15-16μm)はバランス重視でEV向け、C-1(22-23μm)は効率・寿命重視でゲーム機向けとなっています。また、A-2とB-2はそれぞれA-1とB-1の炭素被覆品です。
測定を行った結果、粒子径が多くなるほど粒子径分布の幅が広くなり、形状もばらつきが大きくなっています。さらに、炭素被膜処理によってA-2はA-1よりも粒子径が大きくなり、特に円形度の低い粒子量が増えています。また、A-2、B-2ともに複数の粒子が連なったような形状が観察されており、被覆により造粒されていることが示唆されています。
これらの結果と合わせ、比表面積や粒子密度の評価を行うことによって電池材料の多角的な粉体物性評価を行えます。長寿命や高出力などの目的に合わせた電池性能の実現や、電磁材料の品質の維持・改善への寄与が期待されています。
参照元:株式会社島津製作所
(https://www.an.shimadzu.co.jp/sites/an.shimadzu.co.jp/files/pim/pim_document_file/an_jp/applications/application_note/21334/an_01-00492-jp.pdf)
リチウムイオン電池材料の粒子径分布を測定する方法
リチウムイオン電池材料における粒子径分布を測定する主な方法には「レーザー回折散乱法(LD)」「動的光散乱法(DLS)」「走査型電子顕微鏡(SEM)」などがあります。ここでは、それぞれの測定方法の比較や、材料に応じた測定方法の選び方を紹介します。
主な測定手法の比較
「レーザー回折散乱法」は、粒子にレーザー光を照射して、散乱光の強度分布から粒子径を算出する方法で、リチウムイオン電池材料の粒子径測定を行う際に一般的に使用されている方法です。こちらの方法は乾式・湿式いずれでも測定が可能となっており、大量のサンプルを分析する際にも短時間での対応が可能。測定範囲は通常0.1μm〜数mmとなっています。
「動的光散乱法」は、ブラウン運動をしている粒子における散乱高強度の揺らぎを解析して粒子径を測定する方法です。測定範囲は通常1nm〜数μmですが、特に100nm以下の微粒子に対する測定を行う際に優れた精度を発揮する点が特徴です。
「走査型電子顕微鏡」は、試料の表面に電子ビームの走査により発生する二次電子などを検出し、表面の形状を観察します。粒子の形状・表面の状態について高倍率での直接観察が可能です。ただし、粒子が凝集しているケースでは正確な測定が難しくなり、試料分散処理が必要となります。
電池材料に適した測定方式の選び方
リチウムイオン電池の性能は、正極材・負極材の粒子径分布に大きく影響されるため、適切な測定方法を選ぶことが重要となってきます。例えばレーザー回折散乱法の場合は正極材料やグラファイト負極など幅広い電池材料に適用され、広範囲の粒子測定が可能です。また、動的光散乱法は微粒子の測定に向いているなどの特徴があります。 このような点から、材料の特性と粒子径範囲などを考慮した上で適切な測定方法を選択することにより、リチウムイオン電池の性能向上と品質の安定化につながるといえます。
測定時の注意点
粒子径測定を行う際には試料の分散状態を適切に整えておくという点に注意が必要となります。自然状態では粒子が凝集しやすく、超音波処理や分散剤の添加などを用いて、できる限り一次粒子の状態にしてから測定することが重要となってきます。もし分散が不十分なままで測定を行うと正確な結果が得ることが難しくなります。このように、粒子の分散状態は測定結果に大きく影響を与えるために注意が必要といえます。
まとめ
リチウムイオンの性能には、粒子径が大きく関わっており、用途や求められる性能によって適した粒子径が異なってきます。具体的には、エネルギー密度や出力、寿命などに関わってくることから、材料特性と用途に応じた設計が必要といえます。

















