ナノ粒子の粒子径測定方法とその精度
ナノ粒子ってどうやって測定する?4種類の高精度測定を解説
ナノ粒子の粒子測定技術は様々な分野で応用されています。 例えば医薬品分野。粒子径の安定化は体内への吸収効率、ひいては薬効に直結することから、医薬品分野におけるナノ粒子径測定技術は極めて重要なテーマとして取り扱われています。 ほかにも、肌への浸透効率が重要とされる化粧品分野、性能の安定性が求められる電子材料分野など、ナノ粒子径測定技術が不可欠となる分野は少なくありません。最終製品の品質安定化が重視されるあらゆる分野で、ナノ粒子径測定技術が応用されています。
動的光散乱法(Dynamic Light Scattering, DLS)
動的光散乱法の原理と特徴
原理
動的光散乱法(Dynamic Light Scattering, DLS)とは、レーザーを利用して粒子の動きと光錯乱を解析する技術のこと。 溶液中でブラウン運動を行うナノ粒子の運動速度を測定し、材料の粒子径を推定します。
特徴
ナノメートル単位の粒子のサイズを高速かつ正確に算出できることが、動的光散乱法(Dynamic Light Scattering, DLS)の特徴です。 ただし、球形以外の粒子の形状について、正確な情報を得られない点に留意が必要です。
用途
動的光散乱法(Dynamic Light Scattering, DLS)は、医薬品分野や化粧品分野で多く利用されています。 医薬品は、有効成分の体内への迅速かつ安定した吸収が求められる製品。化粧品は、有効成分の肌への高い浸透率が求められる製品。いずれも一定のナノ粒子径が品質を左右する分野です。
電子顕微鏡法(Electron Microscopy)
電子顕微鏡法の原理と特徴
原理
電子顕微鏡法(Electron Microscopy)とは、粒子の表面に電子ビームを照射することで粒子の特性を観察する技術のこと。 観察目的により、TEM(透過型電子顕微鏡)、またはSEM(走査型電子顕微鏡)が用いられます。 TEMとは、電子ビームの透過により形成された画像から、粒子の細かい内部構造を観察する装置。SEMとは、反射された電子から粒子の表面を観察する装置を言います。
特徴
動的光散乱法(Dynamic Light Scattering, DLS)が苦手とする粒子の形状、構造の正確な観察が可能となります。 ただし、観察のための準備に手間がかかること、コストの負担が大きくなることなどの課題もあることから、誰もが気軽に行える観察ではありません。
用途
電子顕微鏡法(Electron Microscopy)は、エレクトロニクスや材料工学の分野で多く利用されています。 具体的な用途は、ナノ粒子の構造解析や材料の細かい欠陥の評価など。とりわけ、電子部品や新材料の開発分野では不可欠な観察技術とされています。
ナノ粒子トラッキング解析(Nanoparticle Tracking Analysis, NTA)
ナノ粒子トラッキング解析の原理と特徴
原理
ナノ粒子トラッキング解析(Nanoparticle Tracking Analysis, NTA)とは、測定対象となるナノ粒子の動きをビデオ撮影し、その動きから粒子径を推定する技術のこと。 ブラウン運動を行う粒子の軌跡をトラッキングし、その動きの速度から粒子径を算出します。
特徴
異なるサイズの粒子が混在する場合でも、粒子ごとに個別でサイズ分布の情報を得られる点が特徴。 分布の情報から、粒子径の全体的な均一性を算出することも可能です。
用途
ナノ粒子トラッキング解析(Nanoparticle Tracking Analysis, NTA)は、ナノ粒子の動態・挙動を細かく把握する必要のある分野、たとえば医薬品研究や環境モニタリングなどで多く利用されています。
小角X線散乱法(Small Angle X-ray Scattering, SAXS)
小角X線散乱法の原理と特徴
原理
小角X線散乱法(Small Angle X-ray Scattering, SAXS)とは、X線の照射で得られた錯乱パターンを観察し、ナノ粒子のサイズや構造を解析する技術のこと。 X線の作用により表面や内部に生じた粒子の錯乱角度を測定し、粒子径や構造、形状などを推定します。
特徴
非破壊で粒子測定を行える点が小角X線散乱法(Small Angle X-ray Scattering, SAXS)の特徴の1つ。 また、多孔質材料などの複雑な構造を持つ粒子の解析が可能なことも特徴とされています。
用途
小角X線散乱法(Small Angle X-ray Scattering, SAXS)は、材料科学や食品化学などの分野で多く利用されています。 具体的な用途の例は、材料科学分野ではポリマーやナノ材料などの解析、食品化学分野では食品添加物の粒子構造などの解析など。得られた情報は適切な製品設計に役立てられています。
高精度測定の意義と装置導入のメリット
製品品質の向上
高精度測定を行うことでナノ粒子のサイズを均一化できるため、結果として最終製品の品質向上につながります。 たとえば医薬品分野では、有効成分の効率的な吸収と安定した薬効を得るため、ナノ粒子径の均一化は不可欠。電子材料分野でも、均一なナノ粒子径が製品性能を左右します。 ナノ粒子径の均一化・安定化のためには、粒子の高精度測定を欠かすことができません。
効率の最大化
高精度測定により適切なナノ粒子径を得ることで、ナノ粒子の反応効率が向上。 結果、材料の過不足による余分な労力、無駄な製造工程、製品の再調整などが排除され、全体の流れが効率化します。資源の無駄も排除できることから、長期的には大きなコスト削減につながる可能性もあるでしょう。
研究開発の加速
従来、ナノ粒子径の解析には多くの手間や時間がかかるものでしたが、高精度測定装置を導入することで、それら手間や時間の大幅な削減が実現します。 研究開発の効率化により短期間でより多くのデータ収集が可能となれば、製品開発のスピードも加速。市場における競争優位性も向上するでしょう。
まとめ
高精度測定の主な方法は4種類。 DLSは効率的に粒子の均一性を解析する手法、電子顕微鏡法は粒子の形状や内部構造の解析に優れた手法、NTAは異なるサイズの粒子を個別解析できる手法、SAXSは非破壊で複雑な粒子も解析できる手法です。 自社製品の開発に適した高精度測定装置を導入することで、製品の品質安定性や研究効率が向上。結果として、市場競争率の向上も期待できるのではないでしょうか。
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